case.1 天下一のほら吹きに立ち向かう

排除があった日時2016年7月8日
排除があった場所札幌三越前 
排除された人鶴田昌嘉さん(北海道画廊社長)
そこへ行った目的安倍晋三前首相に対して一言意見するため
主張の内容「ほら吹き天下一」
警察の対応立ち去ろうとするところを複数の警官に追いかけられた
警察の根拠不明
安倍前首相に向かって「ほら吹き天下一」と叫んだ道路を前に、当時の状況を振り返る鶴田さん

1.安倍前首相の演説会

[大杉]出来事があったのは2016年。参議院選挙の時ですね。当日の出来事を教えて下さい。

[鶴田さん(以下、敬称略)]その日、ここで店(画廊)にいたわけですけども、お客さんから「ちょうど今日アベちゃんが札幌に来ている」と聞いて、発作的に演説会場の三越前に行きました。やっぱり何か一つでも言わないと気が済まないと思ったんですね。
 僕の店にはプラカードの材料になるもの(ダンボールなど)がいっぱいありますから、そのうちの一つ、少し厚手の紙にメッセージを書きました。内容は少し考えたんですよ。明らかに政治的な文言を書いたりすると、「何の根拠があるのだ」と言われて揉める可能性がある。そんなことで揉めたくないから、突っ込まれないようにユーモアを込めて「ほら吹き天下一」と書いたんですよ。
 「原発は完全にコントロールされている」とか、「絶対に実施する」と言った消費税を「新しい判断」でやめるとか、出来もしない「一億総活躍社会」とか、アベちゃんはそういうことばかりでしたから。ほら吹きと言って何が悪いのかという気持ちでした。
 メッセージを書いた紙は巻けるような素材なので、小さくして三越前に行きました。でも、もし逮捕されるようなことがあっても困るから、うちの社員のSという男を一人連れていきました。「見ててくれ」と言って。

自身が経営する画廊にて

[鶴田]三越前では、道路を挟んで向かい側に、アベちゃんが街宣車の上に立っていた。TSUTAYAの前ですね。そして私は三越前の歩道側から近づきました。現地では車の通りも止められて、車道までが聴衆スペースになっていたと思います。聴衆が1000人ぐらいいて、私服警察のような人間も100人はいるなという印象。もう立錐の余地がないほどだった。最前列から5列目くらいの、人がびっしりいるところまで行き、巻いていた紙を広げて持ち上げました。それから左右に動かしたたわけです。声もなにも上げてないけど、アベちゃんからは完全に見える場所だったはずです。
 でも書いてある文字が裏側からも見えるから、周囲の人間2、3人にも見とがめられた。「お前よそへいけよ」とか「来るなよ」などと言われ、こづかれました。そんなに強い力ではないですけどね。一緒に連れて行ったSは、僕の一挙手一投足を見ていたわけですが、「社長こづかれてましたね」なんて後から言われましたよ。
 それでも我慢してやっていましたが、厄介なことになっても困るなと思いました。というのも、僕にはダウン症の息子がいるんです。もう40歳になるんだけど一言もしゃべれない。女房をガンで亡くしてから、その子と2人暮らしなんです。もしも僕が捕まったりすると、その子の世話をする者がいなくなる。施設の送り迎えも必要だし、帰ってご飯食べさせなきゃいけない。警察に関わって帰れないことになる事態だけは避けなければいけないと思った。
 それで僕も逃げ腰だし神経も細いから、プラカードを掲げながらも「もうやばいな」と思った。自分では我慢したつもりだけど5分も掲げていなかったかもしれない。紙をまとめて退散することにした。でも、私服警官がついて来るだろうという予感はあった。後ろに沢山いましたから。

鶴田さんが当時立っていた三越前の交差点

 とりあえず人波をかき分けてその場を離れることにしました。一緒に現場に行ったSは、その様子を離れたところから見ていましたが、僕が逃げるのと合わせて、警察の隊長みたいなのが「70代サラリーマン風」云々と無線で喋り、それを聞いた私服警官の連中が5、6人ぐらいワーッと僕を追いかけたらしいです。「みんな、社長のこと追いかけてましたよ。よく捕まりませんでしたね」と後から言われました(笑)
 群衆で身動き取れないから、僕も必死でした。それから地下街に逃げ込み、コンビニのトイレに逃げ込みました。何が何でも捕まるわけにはいかないと思い、トイレに10分隠れてから、恐る恐る出てきて、わざわざ逆方向である6丁目のあたりまで行き、迂回してからここの店に帰ってきた。
 この日の出来事はそれだけ。お粗末な話でした。

[大杉]警察から逃げるとき、後ろから追ってきているというのはわかったんですか。

[鶴田]来るだろうとは思ったけれども、直接には見ていないですね。Sが見ていました。

[大杉]プラカードを掲げるだけで追いかけてくるという警察の行為についてどう思いますか。

[鶴田]大杉さんの出ている番組(HBC テレビ「ヤジと民主主義」)を僕も見ましたけど、警察が「聴衆を含めて周囲の安全を守るために対応した」云々と言っていましたね。しかし、そんなものは嘘だというのは僕の体験からもハッキリわかります。トラブルもなにも、僕はすでに立ち去っていましたから、それを追いかける理由がない。

[大杉]プラカードを掲げている間、周囲から小突かれていたことについて警察は気づいていたんでしょうか。

[鶴田]見えなかったと思います。ただ、批判的なプラカードを掲げていたのは警察からも見えただろうから、それでマークはされていたでしょうね。でも、混乱が起きるほどの出来事ではなかった。

[大杉]逆に鶴田さんに加勢してくる人はいなかったんですか。

[鶴田]それはないですよ(笑)。日本人にはそういうタイプはいないですから。
 僕の場合は完全に逃げていただけ。混乱なんかありえない場面。なのに警察が指示して追いかけさせた。何をするつもりだったかはわからないけれども、職務質問をするところだったんでしょう。
 警察はしらを切って、「トラブル防止のために介入しました」なんて言うかもしれないけれども、「そんなの嘘だよ」と自分の体験から強調したい。「反アベちゃんだから」というだけで捕まえようとする、その体質がはっきり表れていた。言論統制です。

[大杉]2017年7月に都議選があった際、みんなが秋葉原駅前で「アベやめろ!」とコールして、アベちゃんが「こんな人たちに負けるわけにはいかない」発言をしたという問題がありました。以降、アベちゃんはヤジに神経をとがらせているという話を聞きますが、鶴田さんの件はそれよりも前ですね。

[岩手]聴衆の規模なんかを聞いていると2019年の比ではないですね。森友学園などが問題になる前だから、アベちゃんの人気が絶頂だった頃なんでしょうね。それだけ動員や周知をして集めたんでしょうけど。

[大杉]「こんな人たち事件」があってから、「ステルス街宣」と呼ばれるように告知をしなくなったと思いますね。

[岩手]昔は「安倍総理きたる」みたいなポスターがあちこちに貼り出されてましたからね。

[大杉]というか、総理大臣が来るなら普通そうしますよね(笑)。総理大臣が来ることを隠すって意味不明です。

2.意見広告問題

[鶴田]あとは、僕と公安警察の関わりという意味では、それ以前にある出来事があった。
 過去に朝日新聞の全国版に意見広告出させろと本社に申し出たことがあるんです。650万円用意して。「アベなんかの言うことを聞いてたら必ず戦争に至るし、世の中めちゃくちゃなことになるに違いない」みたいな内容で。
 僕は、北海道にある朝日新聞の広告社と仕事で長い付き合いがあって、100万、200万の広告をいっぱい出してた。だから広告主としての信用はあったはずです。でも、協議の結果、「この文言では出せない」と言われた。

[大杉]ちなみにどういう内容だったんですか。

[鶴田]「嘘つき」と言うことを強調した。「このままいったら、必ず日本に災いを起こす」と。でも、断られたので、全国53の主要な新聞社に全部同じ文章で打診したんです。しかし、全国の新聞社でも断られたんです。過激すぎると。
 ただ、その中で、「文言を変えるなら考えてもいい」と返事してきた会社があった。それで原稿を変えた。でも先着順でやったら、結局8社でお金が尽きてしまった。全3段のこれくらいの、けっこう大きい広告です。「このままでは小林多喜二の時代がまた来る。気をつけましょう」みたいなことを、表現を柔らかくして書いたんです。
 一番初めに載ったのは新潟日報だった。そしたら、掲載された次の日には、公安警察がもうゴロゴロうちの店の前にきたんです。それで、「凄いことになったな」と思いました。行列みたいになっちゃって。

警察が詰めかけたという、鶴田さんが経営する画廊

[鶴田]その後も、沖縄タイムス、琉球新報、中国新聞と次々と掲載した……そうしたら毎日が公安警察だらけですよ。こんなに人が来ない店なのに。彼らは脅しとして来るんですよ。絵は全く見ない。ただにらみつけてくるだけ。あまりに身近すぎるから道新(北海道新聞)には出してないんです。それなのに大量の公安が来たわけです。それが一ヶ月くらい続いて、うちの社員はノイローゼみたいになってしまいました。

[岩手]憲兵じゃないですか。

[大杉]それはいつ頃でしたか

[鶴田]いつ頃だったかな。もう全部そういう資料とか捨てちゃってるから。でも、秘密保護法に危機感を持ってやったと思うから、2014年頃でしょうね。
 当初、意見広告を出すのを決めた時は死ぬ覚悟でいましたね。意見が過激で、右翼にやられるんじゃないかって。でも内容が過激すぎて、朝日新聞も全国の53の新聞社も断ったから命があった。文言を柔らかくしたから、公安警察に監視されただけで済んだ。

[大杉]2016年以降、警察と関わる機会はありましたか。

[鶴田]その後はないような気がします。でも、「あいつはほっといても何もできない、人畜無害な男だ」と思われてるんじゃないですかね。「もう歳だし死ぬだろう」と。
 今だったら何でも言えるんだけど、でもネットでいろいろ書く勇気がなかなか出ないんですよね。でも僕もお二人みたいに信念を貫いて声を上げていかないと、死んでも死に切れないとは思いますけどね。(了)

於:2021年6月8日北海道画廊
聞き手:大杉、岩手

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